予防接種を受ける時の心構え

ドクター2021.7.1

予防接種を受ける時の心構え

いま、世界中で新型コロナウイルス感染症が流行しています。テレビをつけると、毎日、患者数や死者数が報道されています。幸い、新型コロナに対するワクチンが日本でも2月から順次、開始されることとなりその効果が期待されています。

新型コロナは、電子顕微鏡でなければ見ることができない小さなウイルスの一種です。これが体の中で増えて病気を引き起こしています。今のところ、新型コロナには特効薬はありません。そこで、ワクチンで新型コロナに対する免疫をつけ、病気になっても重症化しないという対策がとられています。

ワクチンを使うことによって感染症を予防することを予防接種と言います

色々な感染症ごとに、それぞれに対応するワクチンがあります。ワクチンは、感染症の原因であるウイルスや細菌を、弱めたり(生ワクチン)その一部を使ったり(不活化ワクチン)して、体にその病気を覚えさせて免疫を作らせるための薬です。

ワクチンは薬とは言っても、元々がウイルスや細菌ですから、他の薬と違って打ってから熱が出たり、注射した場所が腫れたりということもあります。このため、ワクチンは、体調が良い健康な時に打つ必要があります。

どのようにして健康かどうかをチェックできるのでしょうか?

簡単で客観的な方法は体温をはかる事です。ただし、ワクチンの直前だけでは不十分です。私は、ワクチンをする3日前から1日3回、体温をはかって折れ線グラフにしてもらっています。体温は朝昼晩で微妙に違います。しかし、体調が良い時は、その体温の変動は規則的で、グラフは規則的な平坦な波型を示します。しかしグラフが微妙に上向きに推移している時などは、診察上は何でもなくても、病気の前兆であることがあります。実際に、このため予防注射を中止したらその晩に高い熱が出たということはよく経験します。

病歴も大切です

現に、いまアレルギーや喘息などでお薬を飲んでいる人はワクチンを打つ前に、先生に言ってください。また、リウマチなどに代表される自己免疫性疾患や白血病などの癌になっている人は、これらの治療をしてくださっている先生とよく相談する必要があります。このため、予防接種は、いつもお世話になっている、お子さんのことを良く知っているかかりつけの先生に打っていただくのが一番です。

更に家族の方の中に、ワクチンで大きな副作用があった人が居る場合は忘れずに申告しましょう。家族歴も大事なのです。

ワクチンの副反応を避けるために

ワクチンを打った後、非常に稀ではありますが、失神して意識が無くなり、呼吸や脈拍に異常が出て命の危険が生じる場合があります。これをアナフィラキシーと言います。これは、大抵、予防接種をして20~30分以内に起こります。注射をしたあと院内でしばらく経過を観察するのはこのためです。

ワクチンは、既に書いたように病原体を原料としています。ですから予防接種後24時間くらいは、熱が出たり不機嫌になったりすることがあります。私は、注射の数時間後や夕飯の前に、もう一回、体温をはかるように指導しています。また、生ワクチンの場合は、その潜伏期が明けた1週間から3週間後に、そのワクチンによる病気の症状としての発熱や発疹が出ることがあります。受診時には忘れずにワクチンを打ったことを先生に伝えてください。

ワクチンを打つという事は、抵抗力をつけるために軽く病気にすることであると考えて良いでしょう

ですから、予防接種を受けた日は、あまり過激な運動などは避けましょう。また、副反応が出ることは自明のこととして、できれば平日の午前中に打つことをお勧めします。万が一、アナフィラキシーになった時は、夜間や休日では大きな病院でも十分な手当てができないことがあります。

終わりに

ワクチンの副反応を怖がって予防注射を避ける人が稀にいます。しかし、麻疹(はしか)を例にとると、麻疹になると1,000人に1人は死亡します。新型コロナでもワクチンの副反応や効果がいろいろ議論されています。しかし、死んでしまっては元も子もありません。どこでいつかかるかもしれない感染症に対しては、あらかじめできることは何でもしておくことをお勧めします。

※Happy-Note 2021年春号掲載

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この記事を書いた人
  • この記事を書いた人近藤克己 家電ジャーナリスト
  • 松永 貞一
    永寿堂医院(東京都葛飾区)院長
    東京慈恵会医科大学卒。スイス・チューリヒ大学小児科留学。元東京慈恵会医科大学助教授。小児科専門医。日本感染症学会評議員。著書に「風邪の話」など。