コロナ禍での赤ちゃんとの暮らし

ドクター2021.7.1

コロナ禍での赤ちゃんとの暮らし

「艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉にす」

「艱難汝を玉にす」とは、人は困難や苦労を乗り越えていくことで成長するということわざです。この原稿を書いている2月現在、全国で新型コロナウイルス感染症の蔓延が続いています。受難の時代に子育てをスタートすることの戸惑いや悩み、不安は、想像に余りあります。

でも、ちょっと視点を変えてみませんか。ピンチはチャンス。イベントやサークルが開催されず、赤ちゃんとふたりで過ごす機会を、絶好のチャンスととらえましょう。同じ年頃のお友だちと遊ぶことは、0~2歳くらいまでは必ずしも必要ありません。大切なのは、両親や家族との関係です。特に、ママとの愛着(アタッチメント)の絆が強く結ばれることが重要です。とびきりの笑顔でしっかり抱きしめてあげてください。ママの笑顔は、赤ちゃんにとって最高の心の栄養素なのです。

日光浴不足でビタミンD不足に!

ただ、家にこもってばかりでは決定的に不足してしまう栄養素があります。それはビタミンDです。 ビタミンDは体内のカルシウムの維持に必要で、不足すると低カルシウム血症やくる病をおこします。 くる病になると、歩きはじめる1歳過ぎからO脚などがみられるようになります。ビタミンDの多くは日光(紫外線)によってつくられます。ママが妊娠中に日光を避けると、おなかの中にいる赤ちゃんは、ママ以上にビタミンD不足になることがわかっています。

家で過ごす際にも、換気の時に開けた窓から顔や手を出すようにしてみましょう(窓ガラスは紫外線をほとんどカットします)。人が少ない戸外なら、お出かけもよいでしょう。どのくらいの時間日光を浴びたらよいかは、居住地域と季節によって大きく異なります。冬の札幌では、晴天のお昼でも76分と長時間必要なことがわかっています。日焼けをすることなく、必要なビタミンDをつくることができる時間を載せている国立環境研究所のウェブサイトが参考になります。

母乳栄養の赤ちゃんにビタミンDを!

日本において、ビタミンDとカルシウムは、摂取すべき量に達していない2大栄養素です。食物アレルギーを心配して必要のない食品除去を行ったり、離乳食の開始を遅らせることでもビタミンDは不足します。そもそもビタミンDを含む食品は限られているので、毎日摂るのは難しいのです。なかでも気がかりなのは、母乳で育つ赤ちゃんです。母乳栄養は免疫面など、赤ちゃんにとって最も優れた栄養です。しかし、人工乳(ミルク)に比べてビタミンDの含有量が格段に少ないのです。そこで、母乳栄養の赤ちゃんには、ビタミンDのサプリメントを使うことをおすすめします。

ママと赤ちゃんの心の安定をもたらす「つながり」

コロナ禍で外出ができない、友だちと会えない、友だちをつくる機会がない。ママ自身の「孤独」や「孤立」は、赤ちゃんに対するイライラにつながり、虐待を引き起こすリスクになります。ママにとっても、赤ちゃんの成長にとっても欠かせないもの、それは「つながり」です。

子育て中に利用できる「居場所」のひとつが「こども食堂」です。「NPO 法人全国こども食堂支援センター・むすびえ」では、コロナ禍でも安心して居場所が運営できるよう、感染症対策を徹底して、親子が不安なく集うことができるよう取り組んでいます。「一般社団法人こども宅食応援団」は、食品のお届けをきっかけに、安心できる「つながり」をつくり、親子の「つらい」を地域で支える「宅食」の取り組みをサポートしています。

経済的な困りごとだけでなく、産後の心の疲れから子育ての辛さを抱えるママは少なくありません。ママ友同士で支え合うことが難しい今だからこそ、地域の方々にちょっとだけ頼ってみるのもよいかもしれません。

心に余裕ができたなら、ぜひお手伝いや寄付といった支える側になってくださいね。

※Happy-Note 2021年春号掲載

ドクター 記事一覧
この記事を書いた人
  • この記事を書いた人近藤克己 家電ジャーナリスト
  • 金子 淳子
    金子小児科(山口県宇部市)院長
    平成元年島根大学医学部卒業。国立小児病院(現国立成育医療センター)、山口大学周産母子センターで新生児医療に従事。平成11年より山口県宇部市で開業。現在、山口県小児科医会乳幼児保健検討委員として、より良い生後2週間健診と1ヵ月健診を探求中。