胎児への影響は?副反応対策は?妊娠中の新型コロナワクチンQ&A

ドクター2021.9.28

胎児への影響は?副反応対策は?妊娠中の新型コロナワクチンQ&A

新型コロナワクチンの接種が全国で進んでいます。最近、妊婦さんはコロナにかかると特に重症化しやすいことがわかってきたため、妊婦さんのワクチン接種が特に強く推奨されるようになっています。一方で「打つか打たないか」悩んでいる方もいらっしゃるかと思います。その判断にはうわさではなく根拠に基づいた正確な情報が欠かせません。そこで今回は医師の目線から、今わかっていることをもとに妊娠中のユーザーの皆さんの不安や疑問にお答えします。(2021年09月03日時点の情報です)

監修:日本小児科学会専門医・指導医 坂本昌彦 先生

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新型コロナワクチンは妊娠中でも接種できる

最近の研究では、妊婦さんは、妊娠していない人と比べて新型コロナにかかると死亡率が1.7倍、人工呼吸管理が2.9倍になるなど、重症化しやすいことがわかってきました。妊婦さんはとにかく新型コロナにかからないようにしなくてはいけません。

予防の柱として期待されている新型コロナワクチンは妊娠中でも接種が可能で、例えば張り止めなどの薬を内服していても接種できます。ワクチンはデルタ株など変異株に対しても発症や重症化予防効果は90%近くと高く、ワクチンを打つことで発症や重症化リスクを大きく下げることができます。妊娠中の方にとって接種はメリットが非常に高いとして、日本産婦人科学会等は「妊婦は時期を問わずワクチン接種を」「妊婦のパートナーも接種を」と声明を出しています。

よくある不安Q&A

ここからは、妊娠中の方のよくある不安にお答えします。

Q1. 妊娠中の接種で、おなかの赤ちゃんに悪影響はある?
A. ワクチンによる悪影響はないと考えられています

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新型コロナに感染した場合、感染していない場合と比べて早産リスクが11%→16%に上がり、明らかに流産や早産が増えることがわかってきました。

一方で、これまでにアメリカでは何十万人もの妊婦さんが新型コロナワクチンを接種していますが、接種後の流産や早産、死産の割合は、接種していない場合と変わらないことがわかっています。またおなかの赤ちゃんが生まれつき病気や合併症をもって生まれる割合も増えていません。これまでのデータから、ワクチン接種してもおなかの赤ちゃんに影響が出ることはないと考えられています。

またワクチンの成分であるmRNAは、数日で体内で分解され、長期間体に残ることもありませんし、遺伝子に影響を与えることもありません。そのような理由で何年もたってからお母さんや赤ちゃんに悪い影響を及ぼすことはないと考えられています。

むしろワクチンを接種すると母親の体で抗体が作られ、母乳を通して赤ちゃんに受け渡されることもわかってきました。つまり赤ちゃん自身は現時点ではワクチンを接種できませんが、母親が接種していると母乳を通じて抗体をプレゼントしてもらえるため、感染しにくくなる可能性(よい影響)が期待されています。

Q2. 妊娠の時期に関わらず、ワクチンを打った方がよい?
A. 妊娠初期から後期すべての期間で接種が推奨されています

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現在、妊婦さんのワクチン接種は時期によらず推奨されていますが、特に妊娠初期の接種で悩まれる方も多いかもしれません。

当初は日本産婦人科学会も念のため12週以降での接種をおすすめしていました。しかしその後、初期に接種しても特に流産が増えるわけではないこと、また、生まれつき障がいを持つ赤ちゃんの割合は増えないことがわかってきました。そのような理由で、現在は時期を問わず接種がおすすめされています。

なお、産後体調の回復に不安がある、分娩直前で心配、つわりでつらい場合などの場合には、体調がよくなるまで待つことも可能です。その結果1回目と2回目の接種間隔が少しのびてしまっても大丈夫です。不安な方は主治医とご相談ください。

Q3. 接種後に腕の痛みや発熱があるときは、服薬できる?
A. アセトアミノフェンを含む解熱鎮痛薬を服用できます

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ワクチン接種後、特に年配者より若い方、また男性より女性の方が腕の痛みや発熱などの副反応が出やすいことがわかっています。通常3日以内に改善することが多いですが、熱が出たり痛かったりするのはつらいものです。このような副反応が出た時には、解熱鎮痛剤を内服することができます。内服したからワクチンの効果が下がるということもありません。

成分としてはアセトアミノフェンの成分が入った解熱鎮痛剤が妊娠中でも安心して使えるためおすすめです。市販薬でも手に入りますので、薬局で薬剤師さんにご相談の上購入されてください。服薬以外には、腫れた部分を氷のうや冷却シートなどで冷やすことも可能です。なお接種当日から入浴も問題なくしていただいて構いません。

ワクチンを打っても感染症対策は必要

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ワクチンを接種しても、感染対策は引き続き必要です。その理由を傘をワクチンに、雨をコロナウイルスに例えて説明します。

傘を手に入れることで、外出しても雨に濡れにくくなります。でも、もし外が土砂降りだったら、いくら傘をさしていても動けばぬれてしまいますよね。それと同じで小雨になるまでは傘を持っていてもなるべく外出を控えることが大切です。そして小雨にするには私たち自身が感染対策をしっかり続けることが大切なのですね。

今、家族内での感染も増えています。妊婦さんだけでなく、妊婦さんのパートナーなど、ご家族もワクチン接種を含む感染対策(マスク、換気、3密を避ける、会食を避けるなど)を徹底していただきたいと思います。

ワクチンについてさらに知りたい方は、以下のページも参考にしてください。
長野県「教えて!!新型コロナウイルスワクチン」

『マンガでわかる!子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK』

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SNSを駆使して正しい情報を拡散し子育て世代を応援する、長野県佐久市の「教えて!ドクタープロジェクト」の初著書。
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マンガでわかる! 子どもの病気・おうちケアはじめてBOOK [ 佐久医師会 教えて!ドクタープロジェクトチーム ]

著者:坂本昌彦

※この記事は、ママリから許可を得て転載しています。

<出典元一覧>
・厚生労働省健康局健康課予防接種室 厚生労働省子ども家庭局母子保健課「妊娠中の者への新型コロナワクチンの接種及び 新型コロナウイルス感染症対策の啓発について」(http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210824_kourousho.pdf,2021年8月27日最終閲覧)
・日本産婦人科関連学会,日本産婦人科医会,日本産婦人科感染症学会「新型コロナウイルスワクチンについて(第2報)」(http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210814_COVID19.pdf,2021年8月31日最終閲覧)
・Zambrano LD他「Update: Characteristics of Symptomatic Women of Reproductive Age with Laboratory-Confirmed SARS-CoV-2 Infection by Pregnancy Status — United States, January 22–October 3, 2020」The Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) 69巻・44号・1641ページ,7(2020)
・Jamie Lopez Bernal他「Effectiveness of COVID-19 vaccines against the B.1.617.2 variant」medRxiv2021年5月24日(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.05.22.21257658v1,2021年9月1日最終閲覧)
・国立成育医療研究センター「妊娠・授乳中の新型コロナウイルス感染症ワクチンの接種について」(https://www.ncchd.go.jp/kusuri/covid19_vaccine.html,2021年8月27日最終閲覧)
・厚生労働省「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンはワクチンとして遺伝情報を人体に投与するということで、将来の身体への異変や将来持つ予定の子どもへの影響を懸念しています。」新型コロナワクチンQ&A(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0008.html,2021年8月27日最終閲覧)
・Justine Chinn、Shaina Sedighim、Katharine A. Kirby「Characteristics and Outcomes of Women With COVID-19 Giving Birth at US Academic Centers During the COVID-19 Pandemic」JAMA Network Open(https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2782978,2021年9月1日最終閲覧)
・Tom T. Shimabukuro他「Preliminary Findings of mRNA Covid-19 Vaccine Safety in Pregnant Persons」The New England Journal of Medicine384巻・24号・2273,10(2021)
・Kathryn J Gray他「Coronavirus disease 2019 vaccine response in pregnant and lactating women: a cohort study」American Journal of Obstetrics and Gynecology(https://www.ajog.org/article/S0002-9378(21)00187-3/fulltext,2021年9月1日最終閲覧)
・厚生労働省「私は妊娠中・授乳中・妊娠を計画中ですが、ワクチンを接種することができますか。」新型コロナワクチンQ&A(https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0027.html,2021年8月27日最終閲覧)
・日本産科婦人科学会木村正,日本産婦人科医会木下勝之,日本産婦人科感染症学会山田秀人「新型コロナウイルス(メッセンジャーRNA)ワクチンについて(第 2 報)―」(http://www.jsog.or.jp/news/pdf/20210814_COVID19_02.pdf,2021年8月27日最終閲覧)
・国立成育医療研究センター「授乳中に安全に使用できると考えられる薬 – 50音順 -」(https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/druglist_aiu.html,2021年8月27日最終閲覧)
・くすりの適正使用協議会「妊娠・授乳とくすり」(https://www.rad-ar.or.jp/use/maternity/index.html,2021年8月27日最終閲覧)
・The Advisory Committee on Immunization Practices「COVID-19 vaccine safety update」(https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/downloads/slides-2021-01/06-COVID-Shimabukuro.pdf,2021年9月1日最終閲覧)