ママ(パパ)の歯周病
ドクター2020.8.6

歯周病はアゴの骨の病気
みなさんは、歯周病と聞くとどのようなことを想像するでしょうか?歯の周りの病気と書きますが、歯の周りには歯ぐきがあるので、歯ぐきの病気と思っておられる方が多いと思います。
実際に普段CM等でよく目にするのは熟れた果物に歯が刺さってグラグラしている様子で、いかにも歯ぐきが弱ってしまう病気を連想させますが、実は、歯周病は歯ぐきの病気ではなく、その下に存在するアゴの骨の病気なのです。歯は歯ぐきに植わっているのではなく、アゴの骨に植わっています。その上で歯ぐきがそっとサポートしているのです。
歯周病は静かに進行する
歯周病が進行すると、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯ぐきの間にある溝が深くなっていきます。そうすると、歯ブラシによるブラッシングではうまく清掃することができなくなり、歯周ポケットの深い所で細菌の巣ができてしまいます。
歯周病はすぐに腫れたり痛んだりすることはなく、静かに進行する病気です。徐々に歯周ポケットは深くなり、やがてアゴの骨に達した細菌は骨を破壊していきます。歯を支えてきた骨が破壊されると歯はグラグラと動き出し、最終的に自然に抜け落ちてしまいます。恐ろしいですよね。
30代、40代の約8割が歯周病
この歯周病が国民の約7割に罹患しているという報告があります。軽症から重症まで様々ではありますが、7割という数字は深刻に受け止めなければなりません。7割のほとんどはお年寄りなんじゃないの?いいえ、歯周病の一部には若い頃から急速に進行するタイプがあります。10代、20代で歯周病が発症し、急速に進行する侵襲性歯周炎と呼ばれるもので、適切な治療を受けないでいると、若くして歯を失う方もいらっしゃいます。

歯周病の原因は「細菌」と「噛む力」
これまで、歯周病菌による歯周病のお話をしてきましたが、歯周病の原因は細菌だけではありません。歯の周りの骨や歯ぐきを破壊するもう一つの原因として、「噛む力」があります。例えば、歯並びが悪くて噛み合わせが不安定である場合や、入れ歯や被せ物といった人工物の不具合、歯ぎしりやくいしばりといったものです。異常な噛み合わせや強い力が加わると、アゴの骨や歯ぐきはその力を支えきれなくなってしまい破壊が始まります。これも歯周病です。

ですから、歯周病の原因は「細菌」と「力」であり、両方をうまくコントロールしていかなければ歯周病に打ち勝つことはできないのです。歯周病は進行してしまうと一方通行で、失われたものは戻ってきません。現在のお口の環境を整え、維持していくことが大切になってきます。
歯周病のリスクが高い人
ここで、歯周病はどんな人が発症しやすいかについて述べてみようと思います。まず、プラークコントロールができていない方というのは言うまでもないですが、喫煙者も非常にリスクが高く、非喫煙者に比べると歯周病の発症は約2.8倍と言われております。喫煙者の歯周組織は歯ぐきの質そのものがもろくなり、治療も困難なケースが非常に多いのでぜひ禁煙をお勧めします。
また、糖尿病の方も歯周病発症のリスクが高いので、普段からの食生活や適度な運動にも気を付けておきましょう。